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これでいいのか、小学校の図工の人物画

 

小学校の壁に貼ってある独特な絵。

一年生の娘はこの画法を「リアルなひと」と呼んで、普段からよく描いている。これを自画像だと言う。

先生に言われたから、こう描かないといけない、と娘が言う。

「幼稚園みたいな絵じゃなくて、きちんと描きましょう。まず鼻から描きます。大きく6を描きましょう。次は目。目には黒目と白目。眉毛を一本一本、歯を一本一本描きましょう。腕は大きなソーセージ、手の指は小さなソーセージ5本ですよ。耳もね、最近の子は言わないと描き忘れちゃうんですよ。肌の色は、実際には、<うすだいだい>ではないですね、混ぜて使いましょう。」
保護者会でも先生からお話があった。そうか、こういう教え方をされたのか。

私が思うに、鼻の穴などを強調する描き方は、人を馬鹿にする時の絵の描き方ではないかと。

私は、自分の考えを娘に話した。運動会の絵は、後から思い出して描くものだから、写生画と違って、「事実」でなくて「印象」で良い。印象画とは基本的にイラストであり、頭の中のイメージを自由に描いて良い。少なくとも、「リアルなひと」は子供の可愛い顔の描き方ではない。お友達みんな、可愛いよね。

私はそう言ってから、観察しながら、娘の似顔絵をメモに小さく描いて、娘が描いた自画像と並べた。

子供の目は、黒目が大きいよ。眉毛は、薄くてほとんど無い。鼻は、可愛らしくプチっと、ほとんど印象に残らない。鼻筋はなく、鼻の穴も正面から丸くは見えないね。顔の輪郭はふっくら。ほら、どっちの絵がリアルかな。あと、子供の手はね、ソーセージじゃなくて、モミジだよ。色を付けるなら、うすだいだいを薄くね。子供の顔の色は、桜色に近いから。

幼児が描く、目をぐりぐりと丸く大きく塗る描き方は、イラストにおいて、可愛い、大好き、を表現するときの手法。教えなくても子供が自然に描く、「印象」に忠実な表現だ。鼻だって口だって、印象に残らなかったら描かないのもアリなんだよ。アニメだって、そうなってるでしょ。

クラス全員、絵の内容がほぼ同じ。ちなみに題名も定型文。これを見て感心する大人がいる。娘の絵は下段左から2枚目。お友達の絵は、眉や鼻の配置が崩壊して、顔に見えないもの、肌の色が茶系で不自然なものも。

子供に、事実に忠実な絵を描かせたいのなら、必ず「写生」でなくてはならない。自分で目の前で観察しながら描くのだ。観察の仕方を教えることはできるが、描き方そのものを大人が言葉で教えるものではない。子供には、大人には見えない世界が見えているのだから。

入学前まで独創的な絵を描いていた娘。小学校で描いた絵はどれも「リアルなひと」。残念でならない。