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美しき老人、一人で来店、そして

 

休日は、子供と近所のパン屋さんのイートインで昼食。その時のこと。

80歳くらいに見える男性が一人で来店した。パンひとつとコーヒーの乗ったトレーを持って、空席を探していた。腰は曲がっていないが、手が震えている。

隣の4人掛けの席が、なぜかテーブルのみでイスが無かったので、すぐに私の隣のイスを譲った。こちらは3人だから。

男性は、トレーをテーブルに置き、丁寧に礼を言いながらも、自分でやるといった風に自分でイスを動かした。

奥の壁際の2人掛け席が空くと、男性は通路側の4人掛けが居心地が悪かったのか、トレーを持って席を立った。そうしたら、途中でコーヒーをこぼし、パンを落として転がし、コーヒーの紙コップも落とした。袖も濡らした。

私はこっそり店員のところへ行って伝えた。これ以上私が手伝うと、何だか大先輩に申し訳ない。温かい笑顔の若い女性が来た。よかった。

横から様子を見ていた60代くらいのオジサンが、店員さんに「コーヒー入れ直してやってよ。まだ全然飲んでないからさあ。」と明るく言った。

袖を濡らしながらも席に着いた男性は、一度床に転がしたパンを食べた。

不安定な足取りのわりには、きちんと磨かれた革靴、折り目のついたズボンに、クリーニングに出したような薄手の長袖シャツ。歳をとってはいるが、端正な顔立ち。日経新聞を開いて読み始めた。

ご家族がいるのかどうか分からないけど、きちんとした身なりのわりには、人に頼る素振りが全く無い。何の仕事をしてきた人なんだろう。素敵だなあ。

私が20年前頃に勤めていた会社の、社長や役員の大先輩方に会いたくなった。変わらずお元気でかっこいい姿しか思い浮かばない。