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虹の街にさようなら

 

引っ越したこと、それまでのこと、不思議なくらい思い出さない。友人はみんな気にしてくれていて、大変だったね、辛かったねと言葉をかけてくれるんだけど、そうなのかなあと、違和感。今まで、困ってはいたが、悩んだり迷ったりはしていない。今さら遠い過去のこと、全く頭に無いという感じ。

子供たちには、引っ越すことは3日前くらいに話した。子供たちと入浴中に、この家はもうすぐ引っ越すことになる、と私が言うと、即座に娘が、「パパと離れるのやだ。」と言う。私はまだ引っ越すとしか言っていないのに。

遠方他県のおばあちゃん家に引っ越すことになった、と私が言うと、息子が、「行かないよ。」と、まるで既に決断していたかのように、強く首を振った。じゃあ、トイザらスとイオンのある、近くの街に引っ越すかと聞くと、子供たちは二人そろって深く、何度もうなずいた。何も言わずして既に結論を出している子供たち。これ以上、何も言う必要はなかった。少し空気の良い街だから、体が良くなるといいね、と話した。

引っ越し前日の夜に、保育園のお友達に一斉メールをした。転居のため退園すると。親しくしていただいていた友人には、個別に会って伝えていた。みんなが応援してくれて、有難かった。

当日の朝、保育園に向かう途中、今日引っ越すよ、トイザらスとイオンの街に、と伝えると、子供たちは飛び上がって大はしゃぎ。園では朝からお友達の大歓迎。

その後、子供を保育園に預け、私だけ帰宅して、家では近所のママさんや赤ちゃんを呼んで、大笑いしながら最後のランチ。夫は出かけてしまった。その後、引っ越し業者が来て、あっという間に搬出。

夕方、保育園のお迎えに行くと、ものすごいシュンくんコールのおしくらまんじゅうの中、先生方が涙していた。うちの子供たちは幸せそうに笑って、そして、待ちきれないといった素振りで、早々と園を後にした。

長い電車に揺られ、子供たちは笑顔で興奮気味に新居に帰宅し、搬入。新しい街のコンビニで買ったパンを食べながら、ドラえもんを見た。

3日目に初めて、娘の口からパパの話題が出た。外食中に、「ここにパパがきたらーー、アハハハハ。」と、ふざけていた。私は、きたらいいね、と返した。息子がパパの話をすることは無かった。

5日目から、二人そろって新しい保育園へ。園へ向かいながら、今日から苗字が変身してパワーアップするっていう話をした。

私が子供の頃に近くに住んだことのある街だから、近所に知り合いが少しはいるかなと思ったが、いなかった。

その後も、パパのことを口にするのは4才の娘だけ。娘はよく、パパにメッセージを書いて送る。4才なので、言葉がところどころ間違っている。「は」が「わ」になっていて、小さい「ぁ」や「ぉ」を多用し、絵文字入り。女子中高生っぽい。

6才の息子はそれを黙って見ている。一言も自らパパの話はしない。私に気を遣っているわけではなさそうだ。私よりも先に問題に気づき、背中を押してくれたのは息子だ。息子はよく、ママがいい、と言って私にしがみつく。甘えているわけではない。ママを守らなきゃという意識、そして息子も自分で同意したという意識。息子が子供らしく過ごせる環境を作りたい。

子供たち二人とも、状況をよく理解していて、一いえば十、分かってくれる。笑顔が多く、楽しんでいるかのように見える。

子供が生まれてようやく分かったこと。こんな私でも、ちゃんと周りで気にかけて大事に思ってくれている友達がいる。子供は生まれながらにして私を必要としてくれている。これは、愛なのだと。今思えば、自分が愛されないことは当然だと思って生きていて、特に考えもしなかった。今なら、ちゃんと自分で生きられる気がした。

子供たちが生まれた虹の街を、いつまでも子供たちが大切に思い出せるように、成長の備忘録。