3才画伯
以前の荒れように比べたら、ずいぶん落ち着いた。
娘の3才後半の話。
少し手がかからなくなったのは、成長だと、医者も園の先生も言うが、
私から見ると、3才で受ける予防接種の副反応が、少なくとも半年は影響したと思う。
最近になって、娘の性格が、少しずつ2才の頃の雰囲気に戻ってきている。
やる気と、要領の良さと、素直さと。
3才のある日から突然始まった過激な反抗期は、必ずしも成長ではない。
仮面ライダーやスーパー戦隊のお兄さんが好きだと言う。
どれもクールな色白の美しい青年の役柄。
女の子のキャラクターでは、
アナと雪の女王のエルサと、プリキュアのブルーの子。
どちらもクール美人。
自分に無いものに憧れているのだろうか、
娘とは縁がなさそうで面白い。
「ねえハサミとって。」と言うので取ってやると、
「ありがと!」と言って絵や工作に励む。
娘の絵が私は大好きだ。
最初は線画だった人物が、園で年上のお友達と一緒に描いているうちに、
色を塗ったものに変わってきた。周囲の影響を受けやすく、
人の良いところを取り入れることが得意だ。
そういうところが、上の子とは対照的。
しつこさ、くどさも、上の子と対照的。
良いエネルギーを持っている。
娘は、描いた絵に、すぐシールを貼ったり、切り貼りしたりして、
盛りすぎるので、私が途中で、ちょっと写真を撮らせて、と懇願し、
娘が、まだチョキチョキしてない、と泣いて文句を言う。
そう言われればなおさら、私は娘の絵を取り上げて、
途中経過の写真を撮ろうとする。
色が塗られていない、空白の多い絵は、描き始めたばかりだと
言うのだが、その途中経過も、私は好きだ。
上からシールで埋め尽くされていたものは、剥がさせてもらった。
盛り過ぎ感が、娘らしくて良いので、迷ったが、
既存のキャラクターが入ると、絵の価値が下がる。
そんなことを言う母親は、私くらいだろうが。
絵を描いたのは、途中経過。
チョキチョキ済みのものが、完成。
文字にも興味を持っていて、よくそこらじゅうに自分の名前を書いている。
上の子が、読み書きの練習をするのを見て、
娘もひらがなのノートを一人で黙々と書き続ける。
そこそこ内容のある練習ノートを、ほぼ2日間で仕上げた、根気の良さ。
やっていることは上の子よりも進んでしまっているのだが、
まだ3才なので、それなりの出来映え。それでも、
上手に書けていないことを悔いず、大胆に挑戦する。
朝食中、頭の上にスティックパンを二本乗せてウサギの耳を作ると、
上の子も全く同じように二本、向かい合って楽しそうにニンマリと笑うと、
「うっさぎーの みみっぽ ぱんぱんぱん。
うっさぎーの みみっぽ ぱんぱんぱん。」
と謎の掛け声。
ある日公園で、知らない男の子とすぐに仲良くなり、
二人っきりで遊んでいた。
すごく女っぽく笑い、ときどき、ちらちらっと私の方を見る。
子供同士でも、男の子に媚びるようになったようだ。
家では、暴君であり、甘えん坊でもある。
私にすぐ命令をし、私が言うことを聞かないと私を叱ろうとし、
目を剥いて威嚇し、かと思えば、すぐ甘え、何でも抱っこ。
外ではかなり、いい顔をしている。
ある日の園帰り、上の子と傘を交換して上機嫌。
雨の中で変顔をしながら大はしゃぎで帰宅。
そんな、奔放で愛嬌たっぷりの、3才。
ずっと3才でいいと思う。