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子供番組を語る

 

『仮面ライダー 鎧武(ガイム)』を、褒めちぎってみる。

一般的には、子供には筋書きが難しすぎる、過激すぎる、
という批判があるかもしれない。
友情、希望、笑い、自己実現、裏切り、不意打ち、
世界征服、禁断の果実、自己犠牲、本当の強さ、愛。
昼のドラマを超えた、実写ドラマによる泥沼劇が、日曜朝8時に。

でも私はこれが子供番組の理想の形だと思っている。
お母さんが、見るわよ、と意気込んでテレビを付ける。
幼児は変身シーンの格好良さに興奮し、戦いを真似て遊ぶ。
中高生のお姉ちゃんは、新人若手俳優に心踊らせる。
赤ちゃんは、登場する果物に喜ぶ。
どんな家族構成でも、みんなで揃って見ることが出来るのだ。
子供が一人でポツンと見ていたり、
親が隣でつまらなそうに付き添っていたりしないのだ。
我が家も、息子が途中で立ってうろつくと、
ほらほら、ちゃんと見てなさいよ、と叱る。
たぶん息子よりも私が食い付いて見ている。
息子にとっては何よりも嬉しいことだろう。

私がこのドラマの質の良さを感じるのは以下の三点。

一つ目は、物語の展開が全く予想がつかず、また、
人の心の激しさを繊細に表現しているところ。
どんどん人が死ぬが、ひとつひとつの生と死が
大切に重みをもって描かれている。

二つ目は、ほぼ無名の若手俳優ばかりが登場するのだが、
誰もが本当に優秀で、美貌だけではないところ。
ひとりも新人の未熟を感じさせない。

三つ目は、戦士や武器のデザインが抜群に良いところ。
巨大な果物が頭上から降りてきて、戦士に変形するのだが、
一見、子供騙しのようで、斬新かつセンスが良く、
子供にも分かりやすく、すべてがグッドデザイン。
あと、主題歌の音楽のレベルも高い。

大人にも十分に見応えがあり、毎週、見終わると、
力が湧いてきて嬉しくなるのだ。

そして、親を取り込めば、おもちゃが売れる。
このビジネスセンスもまた嫌いではない。
うちは300〜500円の食玩しか買わない。
コンビニのお菓子売り場で売っている、おやつとセットのミニプラだ。
デラックス版おもちゃは何千〜何万とするし、かさばるのだ。

この番組の前の時間が、『烈車戦隊トッキュウジャー』。
トッキュウジャーのおもちゃがまた凄い。
男児のほとんどは、戦隊派か電車派。
その両方を取り込んでいる上に、
列車がブロック遊びになっていて、連結して走らせ、
つなげて組んで、自分オリジナルのロボットが作れる。

ちなみに、ガイムの次の時間は、女児向けアニメの『プリキュア』シリーズ。
男児の母としては、特撮、特撮と来て、急にアニメになり、
内容も可愛らしいので、ガイムで放心状態になっていると、
何も頭に入らず、物語が全く分からない。
娘もほとんど見ていない。

物語。
私はいつも、家の窓から外を見て、
地球はこんなにビルとアスファルトに埋め尽くされて
大丈夫か、ついに人類絶滅か、と思っている。
ガイムは、私のそんな思いと重なるのだ。
番組の中では、
自然を破壊して作った街が、森の反撃を受けて侵食されていき、
そこで、人類で一番強い人間が、街と人々を守るのか、
それとも、新しい森の支配者となるのかが議論されている。

本当の強さとは。
逆境にあっても未来を描き、笑顔でいること。
自分の信念に従って頂点を目指し、惑わされないこと。
すべてを犠牲にしてでも愛する者を守り抜くこと。
愛のために悩み、迷い、失敗し、裏切られても愛を貫くこと。
登場人物それぞれの考える強さが語られた後、
結論としては、
最後まで愛を貫く、その強さこそが最強だという設定ではないかと思う。
そしてまた、誰の心にも愛はあると。
昨年の10月から始まって、今度9月末に終わる予定なので、
今が最後のがクライマックスだ。

息子がおもちゃを欲しがる気持ちが痛いほど理解できる。
最終的に、やられたな、と心地よく思う。