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大人4分の1

 

5年前、私は息子が生まれたことで、
急激に生き方を変えている。
生きようとしているし、自分の道を進もうとしている。
そのことが、むしろ苦しいこともある。
私は息子のために、まず自分が幸せになる。
子供は親の生き方を学習して成長するから、
息子には幸せな生き方を与えたい。
でもそれが難しい。

私の笑顔が少ないことを、息子は許さない。
日々、私を笑顔にしようと、一生懸命だ。
「しゅんくんはママのこと大好き。」と言う。
どんなに泣いていたり、反抗していたりしても、
ママは大好き、その言葉だけは裏返すことがない。
ママなんて大嫌い、の捨てゼリフは、
一度も言ったことがないのだ。
どんなに自分のことでいっぱいでも、
最後まで私に優しい、弱音を吐くことをしない、
気持ちがぶれない、いつも前を向いている、
強いものを持った子だと思う。

そんな息子は、春に5才。
今はまだ、私のために生きている。
そのことに対して、ありがとうを言えば良いのかとも思うけれど、
ありがとうは時に寂しい。
今はまだどこか分身なので、心の底のありがとうは、
目を見るだけで伝わるだろう。

ウソは上手になっている。
私は、本当はこうでしょ、と言い当てるか、
あれーっ、と騙されたふりをしておく。
息子は、「ママかわいい。」とよく言う。
ウソかもしれないが、もちろん叱らない。
本当に相手を思って、相手の心をつかむことは、
大切なコミュニケーションだ。
よく、嘘つきは良くないと言うが、それは
自分のためにならないことがあるからだ。
正直は自分のため。誠実は相手のため。
時に正直でなくても誠実であれと思う。

「この子はね、しゅんくんの妹、りんちゃん、
 って言うんだよ、かわいいでしょう。」と、
会う人に下の子を紹介する。
道で出会った下の子の小さなお友達を見て、
「かわいい・・・ククク。」と目を細めて笑う。
公園へ行くと、赤ちゃん達を仕切って
順番に滑り台を滑らせていたり。
ありがとうございますー、今日お兄ちゃんに遊んでもらいましたー、
なんてよく赤ちゃんのママさんから声をかけられる。
息子も赤ちゃんの頃に、近所の小さなお兄ちゃんに遊んでもらった。
ずいぶん面倒見の良い男の子もいるんだなあと、思ったものだ。

息子は例外的な赤ちゃんだった。
ほとんどの母親が経験する第一子の苦労というものを、
私は経験していないと思う。
最初から夜寝て、夜泣きや夜中の授乳はない。
最初から自立していて、一人で遊び、後追いもせず、
勝手に時間どおりに寝て起きる。
訳もなくグズったりしない。よく泣き、よく笑う。
手がかかったのは、重度の偏食と、過敏体質だけ。
楽ではなかったが、子供に対する心配事はなかった。
自信を持って育てた子だ。
それは息子が根は自信家だからでもあると思う。
生まれたときは50cmだったのが、110cmになり、
顔つきもずいぶんしっかりして、
ついこの間まで赤ちゃんだったことが、遠く感じられる。

ちょうど5才の誕生日の日に、
保育園の3〜6才児の誕生会を見に行った。
大勢の園児や保護者達の前に出ると、
お題として好きな動物を聞かれて
「キリンです。」と答えるなど、
控えめに、でもしっかりと、話していた。
他の男の子は猛獣を答えていた。

誕生日には、レゴブロックと、ディズニー映画のビデオをプレゼントした。
レゴの複雑な制作キットを、さっさと一人で説明書を見ながら仕上げていた。

「銀座コージーコーナーのイチゴのケーキがいい。」と言う。
「ほら、これ本当にお店で買えるんだよ、ねえ銀座にあるの?」と
お菓子作りアプリで作った画像を見せるので、私が同じ物を買ってきた。
もう私の知らないことをたくさん知っている。
ちなみに、子供向けアニメ番組のタイトルもひととおり言える。
それほどテレビを見せていないのだが、
一度でも見たら忘れないし、
自分でネット検索して見て、何でも知っている。

ある日、電車を終点で降りると、私の手を引いて言う。
「見て見て、こっち、見ててごらん。
 先頭の白のライトが赤に変わって、
 来た方向に走り出すよ」
言われてみれば確かにそうだが、へぇー、と思う。
いろんなことを私に教えてくれる。
私に無い世界をたくさん持ち始めている。

最近、非常時対応を教えている。
私が病気や怪我をした時、目を離した間に何か起こった時のために、
非常ボタンはどこにあるか、近所で子供の住んでいる家はどこか、
マンションの管理室と電話で話すには、など、
日々、息子と一緒に確認している。

2010.04.30 : 初めての誕生日には音楽を(1才)
2011.04.27 : 誕生日には音楽をプレゼント(2才)
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