母親学級・両親学級にもの申す:育児編
私が住んでいる地区の母親学級・両親学級は、
親になるための教育が何もない。
妊娠とお産の話がほとんどで、
育児に関しては、「新生児のお風呂」のみ。
これでは「お産学級」ではないか。
赤ちゃんは泣く。
大人はあのようには泣かない。
それを早く理解することが、育児の第一歩ではないかと思う。
赤ちゃんがギャーッと泣くのは、意思表示であって、わがままではない。
言葉が大人と同等に話せるようになるまで、子供独特の泣き方は続く。
「よく泣く子=育てにくい子」「泣かない子=育てやすい子」
と言うならば、うちの息子は最も育てにくい部類の子だろう。
息子は、思ったことが口に出る。
たしかに強烈にうるさいが、なんて分かりやすい子だろう、
というのが生まれた直後の第一印象だった。
人一倍うるさいのも、元気な子で良かった、と安心したのだ。
今でも毎日、ちょっと気に入らないことがあるだけで、
ひっくり返って泣きわめくが、だいたい家の中でしかやらないし、
それを育てにくいと感じたことはない。
個人的には、はっきり泣く子が育てやすいと思う。
ところが、周りを見ると、たくさんの人が、
赤ちゃんがどうして泣いているのか分からなくて戸惑うと言う。
マニュアル通りに泣き止まず、イライラするらしい。
一日中、泣き止ませ対策に頭を悩ませ、
夜中に抱っこでゆらゆらしながら家中を徘徊し、
その後も育児に苦手意識を持ち続ける人が多い。
赤ちゃんが泣くのは良いことなのだ、可愛いことなのだ、
ということを、両親学級で少しでもみんなに意識改革できたら、
名前の通り、親になるための学級と言えるだろう。
あと、産後の母親は、赤ちゃん以外の人には関心が行かない。
それが本能であり、母になるということだ。
したがって、夫や上の子への対応は難しくなる。
男性は生んでいないので、家族に対する意識は出産前と変わらない。
だから、母親と父親の意識レベルに大きな差が出来る。
それを家族も本人も当然と受け止めることが大事で、
夫がサポートしてくれない、と嘆くほとんどの人は、
その意識のズレに家族全体がうまく気づくことが出来ていない。
特に仲の良い夫婦ほど、そのズレに驚くことになる。
夜中の授乳のたびに旦那さんにも起きてほしいという考えは、
母親と父親の差を考えると難しいと思うし、
泣いたら抱っこ、を旦那さんに求めるのもどうかと思う。
黙っていたら家事を分担してもらえるというものでもないし、
土日は育児を交代してもらえるのが当然というわけでもない。
旦那さんからは、奥さんが出産と同時に、子供中心の世界で
気がおかしくなってしまった、というふうに見えていることだろう。
そして、第二子になると急に誰もが、上の子最優先で、と言い出す。
旦那さんは。それこそ子供中心すぎる。
赤ちゃんが生まれても家族全員への配慮を忘れない姿勢は、
心がけ次第で可能なこともあるし、それによって母親自身も楽になるのだ。
一方、奥さんに甘えていた旦那さんは、子供が生まれたら、
自分のことは自分でするように、
家の中のことも主体性をもってするように、
意識を変えなければならない。
そんなすれ違いを、出産前に減らしておくことは出来ないだろうか。
出産にともなう精神状態の大きな変化をお互いに理解することが、
スムーズな育児には大切だと思う。
そういうことに気づくきっかけが、両親学級であって欲しい。
生まれると始まる、育児という仕事量の半端ない多さ。
育児だけでなく、家事も増える。
私は今までにいくらでも超多忙な会社で働いてきたが、
それをはるかに上回る、想像を絶する仕事量の多さと細かさだった。
2〜3時間ごとに授乳が始まり、1回の授乳もろもろのお世話が終わる頃に
また次の授乳が始まり、24時間、昼も夜もそのリズムで過ごす。
自分がゆっくり食事をとる間さえない。まとまって寝る時間もない。
もちろん、一日も休日はないし、赤ちゃんのことが気にならない時間は一瞬も無い。
日中出かけている男性がそれを思いやるのは困難だし、
たとえ見ていても、母の本能で気づく情報量の膨大さ、
それによる神経衰弱まで見抜くのは難しい。
母親自身も、そういう自分に気付けないでいることが多い。
自分の夫は父親になれなかった、と心の中で大きなバツを付けてしまう人も。
生まれるまでに、夫婦そろって一日の流れや一か月以内に起こることを
知っておくことも大切だ。大事なのは、
オムツ替えの方法とかお風呂の入れ方とか、そういう個々のことではない。
何と何をしなければならないのか、何をしなくてよいのか、
全体を把握し、一日の流れ、時間の使い方を予測しておくことだ。
子供の成長の大まかな見通しも、あらかじめ知っておいた方が良い。
そんな母親学級・両親学級であってほしいものだ。
でも、学級で講師をしている助産師さんに後から話を聞くと、
全部説明しているけれど、みんながお産がゴールのように思っていて、
聞く耳を持たないと言う。
おそらく、話のついでに、産後の方が大変とか授乳がどうだとか、
そういう育児書に書いてある話はちらっとしているのだと思うが、
実際、ほとんど全員が戸惑っている。
戸惑わない性格の私でも、入院の段階になって突然、
出産後から3時間ごとの授乳スケジュールを渡され、
7・10・13・16・19・22・1・4時、と書いてあるのを実際に手にしてみて、
さすがにぎょっとした。でもその時はまだ、
間に3時間の休憩時間があるものと思っていた。
出産前に知りたかった、こういうことを。
私が歳の近い子を出産すると人に話すと、
誰からも、困難は連続で乗り越えるのもありかもねえ、と言われる
ネガティブ思考、そういう世の中。
私は里帰りも親の手伝いもないが、育児=困難とは思わない。
息子は珍しく最初から、夜は全部寝てしまう子だったが、
私はその時間を仕事の時間としてしまったのが、一番の間違いだった。
夫は、産後は暇だろうと思っていたらしく、
たくさんの頼み事を用意しておいてくれた。
私は実際にその時になってみて、育児がこんなに面白いとは思わなかったし、
仕事が忙しくて育児に専念できないことが何と悔しかったことか。
育児は楽しい。
みんながそう思って子育てをすることで、
地球の未来は本当に変わると思う。