:: rainbowdrops ::

秘密基地

 

よく家の中で、息子の乗り物のおもちゃがなくなる。
どこにやったか聞いても、「ないねー」と言うばかり。
そして一か月後くらいに、息子本人がどこからか、すうっと持って現れる。
私がいくら探してもなかったその辺りから、持って出てくる。
我が家は片付いている方だと思うが、
大人には見えない、秘密基地が、家のどこかにあるらしい。
どこにあったの、と聞くと、「いた」とだけ答える。

息子と一緒に歩くと、絶対に手をつないでくれない。
手をつかむと、必死で振り払うか、地面に座り込んで歩かなくなる。
そして私を振り払って猛スピードで走ってどこかへ消える。
私が追いつかない足の速さ。
追いついたかと思うと、正反対の方向にまた猛ダッシュ。
ちっとも目的地にたどり着かない。
常に走っていて、いつまででも走り続けている。
捕まえると、必ず笑う。

パパよりママの方が強いと思っている。
ちょっと私がやられたふりをしてやると、大喜びする。
でも、以前は、「ママ、パパ」と呼んでいたのが、
最近は「パパ、ママ」とも言えるようになった。

私が妊娠してすぐから、食事を食べなくなってしまった。
私が無理して作ったものは、なおさら食べない。
ニコニコしながらも、心配してくれている。
心配するから、ニコニコしてくれる。
スプーンも使わなくなった。
私に、はいっと手渡して、あーんをする。
今まで絶対にやらなかった指しゃぶりも最近少しする。
早速赤ちゃん返りだろうか。
私の少しの変化にも、よく気が付いてくれている。

4月1日から、近所の保育園に入った。
初日、保育園の部屋に入るなり、見つけたおもちゃを手に取って、
床にごろ寝して遊びだした。
周りの子たちは、泣いたり、不安げな顔をしたりしていた。
次の日も、その次の日も、着いた瞬間から大喜びで遊びだした。
「ママ、バイバーイ」と笑顔で手を振った。
日中は、ニコニコしながら鼻歌を歌い、走り回っていたとのこと。
慣らし保育を2日間に短縮された。
夕方迎えに行くと、「ママいたー、ママいたー」と叫んで喜ぶものの、
ちっとも帰ろうとせず、それまでの遊びを続ける。
廊下へ出ると、出口と反対方向へ走って行って、物陰に隠れて、
ちらちらとこちらを見ては笑っている。
いつも、私を見つけた瞬間の笑顔は最高だ。

給食は、何も食べないようだ。
緊張しているのではない。家と違って、好きなものが何も出てこないのだ。
お友達はみんな食べて、ひとりだけ全部残したんだろう。
家の夕食の時に、そのことを思い出したのか、シクシクと少し泣いた。
特別に、大好きなバナナを追加で出してやった。
息子は悲しいことがあっても、私が見ていない人前では泣かず、
ニコニコしているのだ。五月病になるタイプだと思う。

4日目でようやく、預ける時に、私の顔を見て少しだけ泣いた。
自分が預けられているということに、ようやく気づいたらしい。
これから永遠に、通い続けることになる。
将来、一般的な職業に就いたとしたら、今から定年まで、
ずっとどこかに通い続け、どこかの集団に所属して生きていくことになる。
そのことを、いつになったら理解するのだろうか。
もう、家でずっと親と一緒に過ごした赤ちゃんの時代は戻ってこない。

息子は4月生まれで大柄なので、クラスの中でも一番大きい。
態度も大きいし口数も多いので、外で3才と間違えられる。
息子は大人たちのその会話に、すかさず割って入って指を一本出す。
えー、1才ってことはないでしょう、と言われる。
抱き上げるのは簡単だが、そこから歩くことが難しい重さになってきている。
夫も私も、幼稚園の頃、前から2番目くらいだったので、
息子はいつどのタイミングで小さくなるのだろう。

ワンワン&うーたんのお歌のビデオを見たがらなくなった。
朝の子供番組の放送も見ない。
はまっているのは、新幹線の映像と、崖の上のポニョ。
ポニョのことを「モニョ」と言う。
ポニョは何度見ても同じストーリーだが、毎日見ないと気が済まない。

ACのCMをどれもすっかり覚えてしまっていて、
ぽぽぽぽ〜ん、などの後に必ず、絶妙なタイミングで「えーしー」と言う。
もう最近はたいてい、エーシー、は音声が出ないようになっているが、
息子は、遊びに夢中でも、食事中でも、必ず言う。
言った後のニヤリとした顔が私は好きだ。

地震を挟んだら、書きたいことが何だか少し立ち消えになった。
幸い、直接は被災していないので、遠慮せずに堂々と
楽しく笑いながら過ごさせていただいている。