人間は進化している
この人は、私の続きなのだ。
今の私と、息子はとてもよく似ている。
私の赤ちゃんの頃に似ているのではない。
遺伝的なこと以上に、今まで生きてきた私を
引き継いで生まれてきているようだ。
必ず二度するくしゃみも。
私の赤ちゃんの頃といえば、おとなしくて無口で、
怒ったり泣いたりしない、穏やかな赤ちゃんだったようだ。
でも、その後の人生で、自分を表現すること、意見を言うこと、
人に積極的に関わること、自分を貫くこと、
たくさん身につけたと思う。
そして今、その習得された私が、DNAに刻み込まれ、記憶だけ初期化され、
お腹の中から私を眺めがなら、真新しくなって生まれてきた。男性として生まれた。
凶暴で、豪快で、気が強くて、よくしゃべり、よく笑い、体が頑丈で。
息子は、私が目指してきた自分を、すでに身につけているように見える。
日々、強くそう感じる。
子供は、すでに半生を終えてしまった自分の、残された望みなのだ。
息子がこの先どんなふうに生きていくかは、本人次第だし、
そのことに期待もしない。夢を託したりもしない。けれど、
私が何十年もかけて作ったステップの上に、すでに立っている。
人間はみんな、親のステップの上に立っている。
そうやって、ものすごいスピードで人間は進化している。
私だって、過去へタイムスリップしたら、
歴史に名前を残せるような人物になり得ただろう。
赤ちゃんは未来の人。
私の叶えられなかった自分への悔しさを、
そんなに頑張らなくていいと、優しく慰めてくれているようで、
それが、諦めではなくて、大きな希望で、
小さな肩がとても頼もしく見える時がある。