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理解してもらえなかった先生のこと

 

小学校、上手くいかないまま、二年生を修了した息子。

慢性疾患があり、特に朝晩の時間帯が苦しくて、二年生になってからは、途中から行けたり休んだり。息子はそれでも日々、笑顔を絶やさない。

行きたくないんじゃなくて、行けない。学校へ行けた日は、嬉しそうに小躍りして帰宅する。だから日々、あの手この手で登校を促す。ある日私は、玄関のドアに、黙ってその日の給食のメニューを貼った。給食全般、嫌いだけど、だからこそ、大好きな「あげパン」の日は逃したくない。

三月のある日、二時間目くらいから登校すると、息子のクラスは体育。いちばんに担任の先生が息子を見つけると、「あーっ、良かった。来れたね。」と言って、先生の目が輝いた。愛しい目をしたんだ。

こんな表情は初めて見た。先生、変わったな。

先生は超ベテラン、定年後の再任用の女性で、ビシッと厳しくて、明るく全力で、女性らしく可愛くて、小柄な後ろ姿は高学年の少女のよう。クラスメイトの名前が一日に二、三回は間違って呼ばれると、息子が言っていた。毎日気になるが、あまり先生を責めたくないらしい。自分は叱られることもあるのにね。たしかに、言っても変わらないし仕方ないんだろうけど、気付いてあげることが大事なんだ。息子なら、先生を助けてあげられると思う。

次に登校した時は、先生は「あら、ランドセルお母さんに持ってもらってるの。」と困った顔で言う。これだと、今までどおりだ。でもたぶん、言ってから気付かれたと思う。ランドセルを背負えないほどに体調を崩しながら、何とか登校したんだということに。

息子が徐々に、学校での困りごとを家で話せるようになってきた。隠しているわけではない。本当に、家と学校は場面が違うから思い出さないのだ。給食の時間に、食べられる一品を省かれるらしい。デザート系だけじゃなくて、大学芋も食べさせてもらえなかったとのこと。どれかを残したら、食べられるものまで食べちゃいけない。だから、給食は牛乳だけ、という日が多い。余計に手に力が入らない。真面目にノートを書かない、と叱られる。帰り道で何度も転ぶ。

先生は熱意はあるものの理解は十分でないのだろうと思う。でも私だって、分からないことだらけだ。我が子、初めての二年生、そして、来月からは、初めての三年生。育児とは、初めてだらけなんだ。私の育て方が原因で息子が上手くいっていないのでは、と何度でも思う。

先生と息子の相性は良くないんだろうけど、それでも先生は素敵。

不登校気味の息子を、朝、家まで迎えに来ていただいたこと、夜遅くにお便りをご自身で家まで持って来てくださったこと、授業中なのに何度も電話を下さったこと、お友達の寄せ書きを持って来てくださったこと。その全部が、寄せ書きでさえも、息子を追い詰める。

愛とは、鬱陶しくて面倒なものなんだよ。子供が大人になった時に、今の苦しみがトラウマになるのか、それとも、自分が人から愛される人だと思えるか。どちらかというと後者ではないかと思う。だから、難しいけれど、これでいい。その愛が負担であったとしても。

最終日、息子は、お友達と話して大笑いしていた。調子悪い時ほど、人の笑いを取ろうとする性質は、0才の最初から。

先生は私に、なかなか理解してあげられていなかったと思う、と頭を下げ、経験だけはあるんですが、今回は勉強になりました、とおっしゃった。

定年後に、まだまだ成長。かっこいいなあ。