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乗り物酔いの子供への対応

 

車に乗る前からその気になっている。だから酔う。
という話をよく聞く。
何よりも気を紛らせ、気分を盛り上げることが必要だとか。
私が息子に、「ちょっと苦しくなってきたね。袋あるからね。」と声がけすると、
たいてい周りの人から、言ったら余計に酔うんじゃないかと言われる。

息子は、重度乗り物酔いだが、乗る前からその気になったりはしていない。
車が大好きで、意気揚々と乗るのだ。
かなり怖がりの性格の息子だし、自分が酔うことも分かっている。
前回に乗り物酔いした時の記憶が、トラウマになったりしていないのだと思う。
ただ前回のタクシーで、あまりに酔いが早くヒヤリとしたことがあって、
先日のタクシーはあまり気が進まなかったようだ。
乗る前から具合が悪くなるような子は、気にしているというレベルではなく、
PTSDになっていると考えた方が良い。

乗り物酔いは3才前後から始まり、大人になれば終わる。
乗り物酔いの対策として何よりも重要なのは、まず「乗り物に乗せないこと」。
成長すれば自然と酔わなくなるので、それまで待つこと。
娯楽で出かけるのに無理に乗せることは虐待と変わらない。

それを前提で、どうしても乗せないと困る場合の対応。
子供の性格にもよるが、初回の対応はとても重要だ。

息子への対応としては、
まず苦しみに共感し、徹底して可愛がる。
絶対に叱らない。悪いことをした場合も、
苦しみへの恐怖から来るものと捉え、特別対応をする。
ほら酔ったじゃない、も禁物。
たっぷり抱きしめる。
そうやって、次回への恐怖心を取り除く。
酔っていないか、たえず言葉に出して確認する。
頑張って乗ったらご褒美を与えるのも良い。
ただ、アイスクリームなど胃が冷えるもの、消化の悪いごちそうなどは、
子供でも二日酔いみたいになることがあるので控える。
最終的に、好印象で締めくくることを目指している。

事前の対策としては、
空腹や食べたばかりで胃が活発だと酔いやすいので、
数時間前に消化の良い物を食べさせることが出来れば最も良い。

酔い止めの薬には、感覚の混乱を鎮めるタイプと、吐き気を抑えるタイプとあり、
私個人的には、前者はよく効くが、後者は逆効果だった。
もしかしたら、過敏体質を伴う人には、前者が有効なのかもしれない。
私がいつも買うドロップタイプの酔い止めは、5才からと書いてあり、
フルーツ味がとても美味しくて息子も喜んでいる。
ただ、乗車中に服用させると、乗り物酔いの記憶と
ドロップの味が結びついてしまい、苦しくなることもあるので、
30分前までに服用を済ませる。
乗ってからの場合は、薬よりも、飴やガム、酸っぱいものを食べて
唾液を出させる方が有効。毎回同じ味だとトラウマになる。

乗る前には、運動をしない。なるべく心拍を下げる。
絶対安静とまでは言わないが、決して走らず、
直前には少し立ち止まって待ってから乗車すると良い。
バスやタクシーへの駆け込み乗車は禁物。ベンチでたくさん待って乗った方が良い。

乗り物の種類にもよるが、乗り方としては、
外の風景を見過ぎない。特に晴れた日中は光が強く、目が回りやすい。
横よりは、前方の風景の方がマシ。横の窓にはカーテンやシェードがあると良い。
携帯の画面、地図やパンフレットを、一瞬も見ない。
弱い人は、手元の画面を3秒見ただけで血の気が引く。
遠くのテレビ画面は問題ない。
目を使わないことが大事。
サングラスは有効。子供だと嫌がるかもしれないが。
後は、窓を開け、換気を行う。少し寒いくらいで良い。
温度も大事なので、上着は脱いでおく。
走行中に脱ぐと負担になるので、なるべく事前に。
後ろを振り返らず、安静にしている。
会話は控えめに静かに行い、無理に歌ったりしない。
車体の揺れに合わせて体を倒そうとか考えず、無心で乗る。
保護者が黙って軽く体を倒してあげるのはアリ。
可能ならば眠ってしまうのがいちばん良い。

子供が酔ったかどうかの判断としては、
最初にあごが上がる、
次に喉がごっくん、ごっくん、となる、
最後に、唇が動き、何となく体勢を気にする、
という流れ。
私は、あごが上がった時点でもう袋を見せてしまう。
あるから大丈夫、と安心させる。
まず、大人が早々に気付いてあげることが大事だ。
保護者が気付かないふりをして、明るく振る舞うと、
子供はそのことが何よりも悲しいし、
どぎまぎして心拍が上がり、また酔いやすくなる。
乗り物酔いは気分から起こりうるからこそ、
気を紛らせる方法、酔ったことを無視する方法は逆効果なのだ。
酔うかと思って乗ったら、意外に大丈夫だった、という
経験を積ませることの方が有効だ。

幼児の場合は、酔ったら言ってね、というのは意味が無い。
本格的に酔ったら話せなくなることもあるので、保護者が絶えず観察している。
息子は、3才の時は「お首が苦しい」「疲れた」という表現をしていた。
そういう感じかどうか、本人に聞いてみるのも良い。
返事が無ければ、苦しんでいると考える。
そして、嘔吐した方が楽になる、と伝える。
幼児は一人で袋は持てない。保護者が持っているべき。
もしも汚してしまうと、鮮烈な記憶となり、今後つらくなる。
子供の乗り物酔いの苦しみは、大人の二日酔いの苦しみとは全く度が違い、
強い発作をともなう恐怖の体験だ。

嘔吐があった場合は、その後、好みにもよるが、
ミネラルウォーターなど味の無い飲料を飲ませ、安静にしている。
無理に食事を摂らせない。
何かを強制したりせず、本人の好むようにさせる。

普段からの対策としては、ブランコや、遊園地の乗り物に乗らせ、
浮遊感を楽しめるようにするのは、とても良い。
普段からよく運動をして、体を鍛える。
主に息子への対応だが、多くの人に共通しているだろうと思う。

ちなみに、私も重度乗り物酔い体質。
小さい頃の経験からすると、
落胆して乗った時は大丈夫で、
元気にわくわくして乗った時には酔った。
たいていは気分と逆なのだ。
何よりも安静が重要で、油断は良くないということなのだろう。
病人の気分になって、受け入れて乗ると、すぐに揺れに慣れることが出来た。

苦しみは、分かち合うもの。
子供にとって、苦しみを周りの人に気付いてもらえないというのは、
孤独であり、より苦しいもので、記憶に残りやすい。
乗り物酔いのことを意識させないという従来の対処法によって、
結局トラウマとなり、酔いやすくなってしまうことは避けたいものだ。