:: rainbowdrops ::

お金の光景

 

投げる、投げる。
大混雑の中、押し合いへし合い、
みんなこぞってお金を捨てている。
たいていは、眉毛をつりあげ、
鼻の下を伸ばし、背伸びをして、ポイッと。
御利益はいかほど、と誰もが思いながらも、お賽銭。

みんな、あんなにお金が好きだったのに。
欲深い人ほど、高額を投げて喜んでいるのだろう。

隣の人が投げたのが、前の人の後頭部に当たって落ちた。
5円玉だ。
少し迷ったが、拾うのはやめておいた。

やや高齢のグループが、お賽銭箱は真ん中の小さい箱で、
その周りの白いビニールのところでは駄目だとか、
そんなことを口早にささやいている。

白いビニールの上にはコインばかりで、紙幣はあるが少ない。
たぶん飛距離の問題で、混雑の中、お札を投げる人は少ないだろう。
紙飛行機を折ったら罰が当たりそうだし、たいていは飛ばずに
前の人が着ている上着のフードに着陸することになる。

この群衆に、ベビーカーを押しては、とても割り込めない。
夫と上の子が10円玉を投げに行くのを、寝ている下の子と待つうちに、
私はいいや、と思ったが、まあせっかく来たので、
一人で5円玉を投げてきた。
1円で十分だと思うが、飛距離の問題がある。
5円以上でないと、あの小さな賽銭箱に届かないと思う。
投げるからには、賽銭箱に命中させたい。

フード付きのコートを着て行ったが、
今年も残念ながら何も入らなかった。
いつも通りのお正月の光景。