初めての誕生日
娘は私のことが好きでたまらないらしい。
何度小さな手を広げて抱きしめてくれたことか。
「マーマー」と言って泣き、「マーマー」と言って笑う。
私はそんなに価値のある人間だと思わないが、それでも母親なのだ。
そのことが少し苦しく、とても有り難いのだ。
私は、娘がいてくれたら、いつでも死んで良いと思うし、
いつまでも娘のために生きていたいと思う。
自己実現とか、成功とか、自分の存在さえも
有っても無くてもよいことに思え、
軽く、自由になれた気がする。
たとえ、私の存在がただ娘が生まれるためにだけ
必要だったとしても構わない。
娘は、誕生日の朝、何才?と尋ねるたびに、
嬉しそうに指を1本立てていた。
上の子も、「今日は○○ちゃんのおたんじょうびー。」と大喜び。
近所で家族でランチをして、ろうそくをフーッとして、
赤ちゃんの息では火は消えないのだけど、
ケーキを少し食べた。
また丸いケーキを買って帰った。
夜はたまたま近所の花火大会で、
友人が集まってホームパーティー。
来客のたびに娘は機嫌良く出迎え、人差し指で1才をしていた。
買ってきたケーキで、また歌を歌ってフーッとした。
花火も、驚かずに喜んで見ていた。
よその人に抱っこされてもニコニコしていた。
誕生日プレゼントは、お人形。
そのつもりはなかったが、並べてみると娘にそっくりだ。
初めての女の子らしいおもちゃだが、
ギューッと抱きしめて頬を寄せて、
頭をポンポンとなでて、すごく可愛がっている。
手作りのプレゼントは用意できなかったが、
私が無理せず明るく元気でいることが、娘にとって何よりだと思う。
娘を見ているといつも、幼い頃の私がいるかのようで、
自分を育てているような、そんな感じがする。
たくさんわがままを言うようになると良いと思う。
大きな声で泣いたら良いと思う。
特別に自分は可愛いと思い込んだら良いと思う。
生まれた時はどこか控えめな印象だった娘だが、
温かくて素直で主張のある子に育っていると思う。
自分が出来なかったことを、娘が出来ると嬉しい。
決して自分の身代わりではなくて、ただ、心が軽くなるのだ。