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産後のバランスと変化を振り返って

 

最初に驚いたのは自分の顔のとんでもなく大きいこと。
赤ちゃんの顔を見て、うわぁ小さい、とは思わない。
生んだ瞬間に、何もかもがリセットされて、
赤ちゃんを基準とする自分に生まれ変わったようだ。

鏡で見る自分はとんでもなく大きく、老けていて、嫌な感じだった。
夫の顔は、まるで初対面の人を見るように、
あれ、こんな人だっけ、という不思議な感覚。
毎日一緒に過ごしてきた、その夫の顔とはまるで違う、見慣れない感じなのだ。
ものすごく大きくて、いつも笑っている人だなあと思った。
とても遠く見えた。

そんな状態が1か月ほど。
出産とその後の母乳育児が関係していると思う。
ホルモンバランスの変化により、
赤ちゃんのことしか考えられなくなり、少しの変化も見逃さない。
すっかり赤ちゃんの世界にのめり込んでしまった。
好きだった仕事も、急に嫌になり、育児の大きな妨げに感じて、
育児に専念できないことが悔しくてたまらなかった。

生んでみると、母乳だけで育てたくなる。
粉ミルクが邪道に思えてしまう。
それも母親の本能だと思う。
もともと粉ミルクとの併用を希望していた。
夫にも授乳を体験してもらいたいのと、たくさん外出したいからだ。
結局、予定どおり粉ミルクも飲ませて育てた。
医者はたいてい粉ミルク混合を勧める。
おそらく粉ミルクを飲んでいる子といない子で体格に差があるのだろう。

二人家族から三人家族に変わる、人間関係の変化。
夫は最初その変化に戸惑っている様子だった。
一人増えたからこそ、夫婦二人の時間を大切にしようと思ったようで、
昼夜続く育児・家事・仕事の激務の合間に、
二人の時間を過ごさなければならないことで、
さらに睡眠不足になり、ときどき意識を失いながら過ごした。
でも、夫のその気持ちは、有り難いことだと思う。

全部のことを完璧に。
一瞬も休むことなく、時間をパズルのように、
これをしながら、あれをやって、その合間にそれを、
と頭をフル回転させながら、完璧に無駄のない時間を過ごした。
私はすっかりスーパーマンになってしまった。

そんな多感な授乳期。
1才で授乳を終えると、そこからどんどん元の自分に戻っていった。
いや、元以上にいろいろなことがしたくなって、未来が見えてきた。
新しいことを始めたい。社会に参加したいと強く思う。

でも、冒険はできない。自分の目標のためにリスクを冒すことはできない。
ひとつの命を生み育てるという何よりも重い責任があるからだ。
手の届きそうなことを少しずつやっていく。
私はそれを決して消極的な生き方だとは思わない。
そこに一番の幸せがあると考えているからだ。